2024年09月03日
第12回 私のステートメント的なやつ
以下は9月5日から開催する写真展『私たちのまなざしとその記憶 12』における、私のステートメント的なやつです。
ちなみに、上の写真はGR Tripで集合写真を撮影した時のものです。
真ん中に写っているのがYoshi-Aさんです。
4月13日 講のメンバーと安藤さんのご自宅に伺ったその日の夜 どうにも眠れないものだから 訪問の際に見せていただいた真新しい21mm、75mm、2本のレンズのことを考えました いずれもフォクトレンダー製でf1.4の明るく重いレンズです。
この2本のレンズは状況が難しいことが明らかになってから注文したものですから、明確に使う意図、シチュエーションがあり注文したレンズでしょう
安藤さんがSuper-Angulon、21mmを使い撮影された写真は何度となく拝見していますから 21mmに手を伸ばしたことに疑問はありません
しかし75mmは意外なレンズです
Super-Angulonをはじめ 広角の印象が強い安藤さんに中望遠レンズは意外に思えましたが 少し考えてみるとその印象は失礼だったことに気づきました
私が覚えているだけでも安藤さんが使われていた中望遠レンズに ハッセルブラッド用のS-Plannar 120mmがあります
ライカ判に換算すると75mmに近い画角となるこのレンズを気に入っていることは何度も伺っていました
安藤さんにとっては中望遠も広角と同様に馴染んだ画角だったのでしょう
では 21mmと75mmの2本のレンズで何を撮影しようと考えていたのか
生涯アマチュアに拘った植田正治の晩年は自宅に作った砂丘のミニュチュアやオブジェを組み合わせて撮影していたこと
今でも路上に拘る森山大道ですが歩けなくなったら4x5を使って自宅で撮影すると言っている
そんな話を安藤さんから伺った記憶があります
今になって思えば 安藤さんご自身の老いていく体に思いを重ねて話されたのかもしれません
しかし、ストリートスナップの名手である安藤さんですから 体に老いを感じたとしても静物ではなく路上に拘ったのではないでしょうか
安藤さんからは沢山の写真家の話を伺いましたが 中でも話題が多かった一人は荒木経惟だったと思います
荒木経惟は前立腺がんを患い片目を失明していますが それ以降も病院へ向かうタクシーの中から撮影した写真を発表しています
安藤さんのブログ「Yoshi-A の写真の楽しみ」にも書かれていましたが 闘病生活ではお嬢様が運転する車で様々な場所へと足を伸ばしたそうです その車の中でもスナップを、ストリートを撮れる 安藤さんはそう感じたのではないでしょうか
ある雑誌に車椅子に乗りながらもα7で撮影するウイリアム・クラインの姿が掲載されていましたが 車内からの撮影だけでなくそのイメージも頭に浮かんだのかもしれません
残されたカメラにはライカの他にα7cもありました
ご自宅で拝見したカメラやレンズのこと、古町でコーヒーを飲みながら話したことを思い返すうちに、ライカに21mmを、α7cに75mmを付けて後部座席から撮影する そんな安藤さんの姿が思い浮かびました
もちろん私の妄想でしかなく 21mmと75mmのレンズを用意した真意はわかりませんが 撮影への情熱はまるで衰えていないことは疑いようもありません
過去に固執せず積極的に新しい機材を取り入れ 90歳を超えても撮影を続ける川田喜久治に対する敬意の言葉を何度となくお聞きしていました
そして安藤さんもそうあろうとしていました
新しく2本のレンズを用意したことからも疑いようがありません
植田正治、荒木経惟、森山大道、川田喜久治、ウイリアム・クラインがそうであるように 安藤さんも挑戦を続けています
路上に拘り挑戦を続けたアマチュア写真家 安藤善治とグループ展でご一緒でき また時には街中で声をかけられコーヒーを飲みながらあれこれと話をできたことは 光栄であり、そして 行動をもって挑戦を続ける姿を間近で見せつけられたことは 他に代えることのできない経験です
Yoshi-Aさん、ありがとうございました
この記事へのコメント
今日は会場で久しぶりにお会いできてとても嬉しかったです。胸がいっぱいになってしまい二階の作品を見ないで帰ってしまいました。皆さんによろしくお伝えください。またお会いできるのを楽しみにしています。
Posted by 菊地裕 at 2024年09月06日 22:09
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